解決事例
NO.22 破産申立 ⇒ 個人事業廃業後の自宅の任意売却と同時廃止事件
<事案>
Aさんは,個人事業で青果店を営んでいましたが,大型スーパーの進出で売上が激減したため廃業し,営業職のサラリーマンとなりました。廃業後に残った債務を1年ほど給料で支払っていましたが,支払が難しいので破産申立をすることにしました。かつて個人事業をしていたこと,事業資金借入の抵当権の付いた自宅(価値400万円,残債務500万円)があることから,同時廃止事件(*)ではなく破産管財人が選任される破産管財事件(*)になるかと思われました。
<解決に至るまで>
まず,個人事業主についてです。大阪地方裁判所倒産部の運用では,現在または破産申立6か月内に個人事業主だった場合,破産管財事件となります。Aさんは,廃業してサラリーマンとなり1年を経過しているのであたりません。
次に,財産の有無についてです。上記裁判所の運用では,抵当権付不動産につき残債務が不動産価値の1.5倍以上である場合は,「オーバーローン物件」として財産なしとされます。Aさんの自宅は,残債務が価値の1.25倍ですので,「オーバーローン物件」とならず財産ありとなります。
<最終的な結果>
Aさんの奥さんの兄がAさんの状況を知り,自宅を買い取って,Aさん夫妻に賃借してもよいと言ってくれました(自宅のリースバック)。当方と抵当権者の交渉の結果,抵当権者は450万円を受け取ることで抵当権抹消に応じ,自宅の売買と賃貸借契約が成立したので,Aさん夫妻は引き続き自宅に住むことができました。そして,自宅の売買が適正価格によるものであること,余剰金が発生しなかったことを裁判所に報告することで,財産なしとして破産管財事件ではなく同時廃止事件で破産開始決定後,免責を受けることができました。
Aさん夫妻は,引き続きご自宅に住んでサラリーマンとして勤務されています。
*用語説明
○破産管財事件 (破産法31条1項) 通称「管財事件」
破産管財人が選任され破産者の財産をお金に換え債権者に配当するお金を確保する手続。
大阪地方裁判所の場合,破産管財人への引継予納金として20万5000円の納付が必要となる。
○同時廃止事件 (破産法216条1項) 通称「同廃事件」
破産者の財産が少なく,破産手続の費用の捻出ができない場合に,破産開始決定と同時に破産手続を終わらせる決定をする手続。上記引継予納金は不要であるが,裁判所の書面審査のため,原則申立時に必要資料をすべて提出し,事細かに報告する必要がある。