「中小企業円滑化法の期限切れの影響は?」

1 前回まで

前回、中小企業円滑化法(以下「円滑化法」といいます。)が期限切れを迎えることで生じるで あろう影響についてご紹介させていただきました。簡単に振り返らせていただくと、期限切れを迎えると金融機関が再度借入先の分類を行い、「要管理先」、「破綻懸念先」、「実質破綻先」、「破綻先」にされてしまえば、借入先が、今後の融資や条件変更等を受けることは難しくなると思われます。そこで、「要管理先」、「破綻懸念先」、「実質破綻先」、「破綻先」に分類(以下、「不良債権先」ということにします。)されないことがまずは重要です。
そこで、「不良債権先」に分類されないようにするにはどのようにすべきかという点と、仮に「不良債権先」へ分類されてしまい、経営に行き詰まってしまった場合にどのようにすべきか(どうせざるをえないのか)という点を検討していきたいと思います。

2 「不良債権先」へ分類されないために

まず、「不良債権先」に分類されないために、黒字会社であることは一つ大きな要素になると思われます。では、黒字会社はどのくらいあるのでしょうか?
平成23年度(平成23年4月1日から平成24年3月31日まで)の申告件数は約85万2千件。そのうち黒字申告の件数は21万件(約24.7%)です(赤字申告は約64万1千件(75.3%)です。)。つまり、大まかにいえば約4分の3の企業は、金融機関に対して何らかの説明が必要になります。
その説明のためには「経営改善計画書」を提出することが有効だと思われます。この「経営改善計画書」とは、自社の経営状態を改善する方法について、具体的な数値で計画した書類のことです。おそらく多くの方が既にお聞きになったこと(または作成したこと)があるかと思います。しかし、以前作成したからといって安心しておくことは有益ではありません。円滑化法が期限切れを迎える前に、金融機関は再度資産評価をすることがあるということを聞いています。その際に、現状をふまえた、より説得的な「経営改善計画書」を提出・差し替えをすることが極めて重要です。説得的な「経営改善計画書」とは金融機関の受けがよいもの、つまり詳細で実現可能性が高いと判断されうるものです。インターネットで検索すると、金融機関などのホームページにひな形がありますが、これは専門的な知識や経験などが必要となるので、本業に忙しい会社経営者や経理担当者のレベルではそれを使って専門的なものを作成するのは難しいのではないかと思います。
     
そこで、自社の顧問税理士の先生や会計士の先生に「経営改善計画書」の作成を相談するべきだと思います。税理士の先生や会計士の先生の中には、金融機関のことを良く知る方が多く、説得的な「経営改善計画書」の作成を得意にする方も多いとお聞きしています                     ので、そうした先生方の指導を受けられるのであれば、安心していただけると思います。

3 「不良債権先」に分類されてしまった場合

 もし「不良債権先」に分類されてしまった場合、その企業の資金繰りが困難になります。     
資金繰りや帳簿上の表記を良くすることに関しては、金融機関からの融資でなくても、いくつか方法があります。例えば、社債や新株の発行、DDS(デッド・デッド・スワップ、既存の債権を劣後ローンに転換するもの)、(再生)ファンドからの支援、M&Aの利用等です。
このうち、社債や新株の発行は中小企業では現実味がないと思われます(おそらく引受
先が確保できないと思います。)。また、DDSは金融機関に相談することになるでしょう。(再生)ファンドについては、金融機関や商工会議所に相談されることになると思います。 M&Aの利用というのは、例えば会社分割などを利用した会社の再編によるものです。例えば、会社には業績の良い部門と悪い部門があると思いますが、それぞれを分割して別会社として、良い会社のみ残す(悪い会社は最終的に清算・解散等して切り離す)等の手法(ただし,濫用的なものであれば判例より否定される可能性もあるので注意が必要)です。
こうした手法をもってしても残念ながら経営を盛り返すことが出来なかった場合は(私的・法的)再生手続または清算ということになります。まず私的再生には、①任意整理、②特定調停手続、③中小企業再生支援協議会などがあります。この3つはそれぞれ誰が主導して行うか等による違いです。私的再生は費用が抑えられるのはメリットですが、いずれも債権者の協力が必要なため、債権者に拒否されてしまうと成功しないのがデメリットです。 

 

私的再生

手続 任意整理 特別調停手続 中小企業再生支援協議会
主導者 弁護士が多い 弁護士が多い(ただし調停委員による調整がなされる 支援協議会
場所 任意の場所 簡易裁判所 支援協議会(商工会議所などに設置されている)
         
次に法的再生手続・清算には①民事再生、②会社更生、③特別清算、④破産などがあります。これら違いは、会社が残るのか、会社が残った場合に代表者が会社に残るのかという点で違いがあります。メリットは、公平性・透明性が保たれる・一部の債権者の反対にも関わらず手続きを進められることにあり、デメリットは費用が比較的高くなるということ等があります。

法的再生手続・清算

手続 民事再生 会社更生 特別清算 破産
会社の残存 残る 残る 無くなる 無くなる
代表者 原則残る 残らない 残らない 残らない
裁判所の関与 有(ただし清算手続は元役員が行う) 有(ただし清算手続は管財人(裁判所が選らぶ弁護士)が行う)
こうした手続きについては、弁護士に相談いただくことが一番だと思います。

4 まとめ

経営者にとって、会社は我が子のようなものだとお聞きします。そして経営者だけでなく従業員の生活も関わってきます。景気回復の兆しがある今こそ、早めに対策を講じていくことが必要です。そして、そうした相談を気軽にしていけるように各専門家が取り組むこともまた急務です。

 

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