「自己破産するとカーリース契約はどうなる?会社・個人別に解説」
会社を破産手続する際には、さまざまな財産を処分する必要があります。では、カーリース契約を結んで利用していた場合には、一体どうなるのでしょうか。
法人の場合、多くの営業車や作業車をカーリースで利用されているケースが多く、破産手続に臨まれる前に知っておくことが大切です。そこで、本記事では法人破産・自己破産時におけるカーリース契約について詳しく解説します。
カーリース契約中の車両がある場合、法人破産・個人の自己破産のいずれにおいても返却する必要があります。破産手続後は法人格が消滅するため再契約もできなくなります。
Contents
法人破産と自己破産|カーリース契約は利用できなくなる
破産手続には大きく分けて2つの種類があります。1つは法人破産、そしてもう1つが自己破産です。一般的に会社を畳む法人破産を選択する際には、連帯保証人となっていることが多いため経営者個人の自己破産も同時に行います。
法人と個人は別人格のため、破産手続も別に分けて行います。もしも両方の破産手続を行う場合には、法人所有の財産および経営者個人の財産のいずれも処分の対象となります。では、カーリース契約がある場合はどうなるでしょうか。
法人破産におけるカーリース契約
法人名義でカーリース契約をしていた場合、破産によって契約期間中でもリース契約は終了します。残リース料は破産によって支払わなくてよくなりますが、会社経営者が連帯保証人になっている場合は請求を受けます。しかし、会社経営者も自己破産で免責許可が得られれば支払わなくてよくなります。
リース契約が終了すると、利用中の車両があったとしても返却する必要があるため注意が必要です。リース会社側は「別除権」の行使によってただちに車両を引き揚げることが可能ですが、実際には裁判所が破産開始の決定時に破産管財人を選任するため、リース会社側と破産管財人側が協議をし、引き揚げるタイミングを決定します。
この手続は車両だけではなく、コピー機や工場機器類などのリース契約も同様です。
個人の自己破産によるカーリース契約
個人向けにも頭金不要・定額料金プランでお得に車両を利用できるカーリース契約があります。個人が自己破産する場合もカーリース契約は終了し、車両を返却することになります。
個人のカーリース契約で自己破産をする方以外の親族等が連帯保証人となっている場合、連帯保証人へ請求が行われるため注意が必要です。
会社破産・個人の自己破産後にリース契約は結べる?
日常的に使用していたカーリース契約の車両を、法人破産や個人の自己破産によって失う場合、今後の生活に大きな影響を与えるでしょう。では、破産後には再びカーリース契約を結ぶことは可能でしょうか。この章で詳しく解説します。
法人としてカーリースを結ぶことはできない
法人破産を行う場合、破産手続の中で法人所有だった財産の処分と債権者への配当が行われた後に、最終的に法人格が「消滅」します。そのため、破産手続開始前の会社としてカーリース契約を再び結ぶこともできなくなります。
自己破産をした個人はカーリース以外の方法がある
個人の自己破産でカーリース契約が終了し車両を失った場合、「信用情報機関」に事故情報が登録されている間は再びカーリース契約を結ぶことはできません。事故情報の登録は、いわゆるブラックリストの掲載されることを意味します。
ただし、以下の方法で車両を用意することは可能です。
家族が新車・中古車を購入する
自己破産をしても、家族などが破産した方のために新車・中古車を購入することは問題ありません。破産者本人が信用情報機関(※1)に事故情報が登録されているとしても、家族には影響が及ばないためです。
(※1)信用情報機関とはCIC・JICC・KSCの3つを指します。自己破産・任意整理などの債務整理や滞納などの事故情報が登録されている機関です。登録後は新たなローンやクレジットカード契約などに影響し、自己破産の場合はCICとJICCは5年、KSCの場合は10年事故情報が登録されています。
家族がリース契約を結ぶ
家族がリース契約を結び、車両を用意してくれることも法的な問題はありません。①と同様に、家族は信用情報機関の影響は受けません。ただし、リース契約の内容によっては契約者しか運転者になれない場合があるため、契約先を選定する際には慎重に判断する必要があります。
破産後にお金を貯めて購入する
自己破産の免責許可が下りた後は、財産が没収されることはありません。債権者から収入が没収されることもないため、生活再建が可能です。事故情報の影響で新たなカーローンやカーリースの契約は一定期間が経過しなければ結べませんが、現金一括での車両購入は破産者本人でも可能です。
これから破産手続を検討する方へ:カーリース契約でやってはいけないこと
「会社経営が立ち行かない、破産を検討するべきか」
「破産前にカーリースしている車両で、やってはいけないことはあるのか知りたい」
これから破産手続を検討している場合、独断でやってはいけないことが多数あるため注意が必要です。この章では法人・個人の破産手続前にやってはいけないことをわかりやすく解説します。
カーリース車両を無断で処分してはいけない
リース契約は長期間にわたっている場合も多く、車両の私物化が見られるケースも少なくありません。会社経営が立ち行かなくなると、月々の返済に追われ法人・個人所有の様々な財産を処分し、返済に充てるケースも散見されます。
しかし、リース契約では車両に限らず所有権は「リース会社側」にあるため、無断で車両を売却・処分できません。走行距離が多く、価値は低いと思われる車両でも、このような行為は固く禁じられています。
カーリース契約にだけ返済を続けることはできない
法人破産を検討中であっても、事業を継続しているケースもあります。しかし、車両が必要である、などの理由でカーリース契約にだけ返済を続けることは「偏頗弁済」にあたる可能性があるため、避ける必要があります。
偏頗弁済とはすべての債権者に対して平等債務を弁済するべきところ、特定の債権者だけを優遇し、返済することを意味します。(債権者平等の原則)
カーリース契約への返済だけを続けたり、親族や友人からの借入にのみ返済をしていると、
破産手続開始決定後に破産管財人から否認され、弁済を受けた会社や個人は受領した金銭を取り戻されてしまう場合があります。
独断で返済先を決めて借金の返済を続けるのではなく、弁護士と相談しどのように破産手続を進めるか協議を優先しましょう。
個人の自己破産も偏頗弁済は禁物
等しく返済ができなくなった時点で、一度法律相談を受けることがおすすめです。なお、偏頗弁済は個人における自己破産にも該当します。返済に困り、特別扱いしたい返済先があっても、偏頗弁済はできません。
持ち出されたままの車両が発生しないように注意する
法人破産は従業員に事前説明をせず、破産手続直前に一斉に伝えることが一般的です。情報が外部へ流出することを防ぎ、従業員や取引先の混乱を最小限に抑えるためですが、事業を直前まで継続していると法人名義のリースの自動車が社外で使用されていることも多いでしょう。
トラック、作業車、営業車などが遠方に行っているケースもあります。しかし、破産開始時には速やかに破産管財人へ引き継ぐ必要があるため、すべて揃えておく必要があります。
破産手続直前~直後に会社名義の自動車が盗難や交通事故に巻き込まれないようにするためにも、厳重に管理をします。
法人破産における車両の取り扱い|3つのポイントとは
法人破産における車両の取り扱いは、カーリースだけではなく法人所有となっている車両にも注意点があります。そこで、この章では3つのポイントに分けて、法人破産後の車両のゆくえについて解説します。
ポイント1.ローンの残債がないケース
車検証上、法人名義となっている社有車がある場合は法人の財産として破産財産に組み入れられます。破産手続開始後に、破産管財人によって処分が行われ売却益は債権者への配当に充当されます。ただし、以下に該当すると購入できる可能性があります。
・市場価値が低い車両
・初度登録から年月が経過しており、古くなっている車両
上記に該当する車両は破産管財人が売却できない可能性が高く、購入希望者がいると売却してくれる可能性があります。たとえば、会社関係者が引き続き利用したい場合、破産管財人に交渉を申し出することで検討してくれる可能性があるでしょう。3
査定価格よりも高く購入希望を行うと交渉がスムーズに行われる傾向があります。あらかじめ購入希望者側で複数の車両の見積もりを取得し、交渉準備を進めておきましょう。
ポイント2.ローンの残債があるケース
車検証上、所有権欄にローン会社などが入っている場合、カーローンの残債がある可能性があります。(所有権留保)
ローンの残債があるケースでは、原則としてカーリース契約時と同じように車両の返却が必要です。破産管財人を経由し、引き揚げを行います。
ポイント3.会社経営者名義の車のケース
法人で使用していた車両が会社経営者個人の名義だった場合、以下2つのパターンが考えられます。(会社経営者もあわせて自己破産する前提でご説明します)
- ローンが残っている場合
法人名義で購入した車両と同様、通常は手元に残すことができません。
- ローンが残っていない場合
ローンが残っていない場合、車両の年式や価値が低い場合は手元に残せる可能性があります。個人の自己破産には「自由財産」と呼ばれる「手元に残せる財産の枠」があり、各地の裁判所によって運用方法は異なりますが、大阪地方裁判所の場合は現金と自由財産の拡張を求められた財産の総額が「99万円」までは手元に残せる可能性があります。車両の場合は現在の価値が20万円以下、もしくは法定耐用年数が6年以上の経過であれば自由財産として手元に残すことができる可能性があります。(軽自動車は4年)
会社経営者が自己破産しない場合
法人破産をしても、会社経営者個人は破産をしないケースもあります。一般的には法人破産と会社経営者個人の破産は同時に行うことが多いですが、経営者保証ガイドラインの利用や連帯保証がないケースでは、個人破産を回避することも可能です。
自己破産をしない場合、法人は破産しても個人名義の財産は残せますので、車両もそのまま残すことができます。ただし、個人破産を回避できるかどうかは、弁護士に相談し慎重に判断することが大切です。
個人の自己破産における車両の取り扱い|2つのポイント
個人の自己破産の場合、法人破産とは違って「自由財産」の枠が用意されているため、先に触れたように一定の条件を満たしていると車両を手元に残せる可能性があります。そこで、この章では個人の自己破産における車両の取り扱いを2つのポイントに分けて解説します。
同時廃止と管財事件における車両の取り扱い
個人の自己破産では、同時廃止と管財事件の2つの種類があります。
- ①同時廃止(破産管財人がいない手続)
同時廃止の場合でも、車両の価値が初度登録から6年以上経過している場合はそのまま所有することが認められる可能性が高いでしょう。しかし、高級車の場合は査定書などを提出し、判断を仰ぐ必要があります。
- ②管財事件(破産管財人が選任される手続)
初度登録から6年以上経過し自由財産拡張の手続で、99万円の枠内であれば残せる可能性があります。
- ①と②のいずれであっても、カーリース契約やローンの残債がある場合は手元に残すことができません。
自己破産以外の債務整理なら車を残せる
個人の自己破産では多くの財産を処分するため、自己破産に踏み切れないという方も多いでしょう。通勤・通学などで利用している車両を失うと、生活ができないという方もいます。どうしても失いたくない財産があり、債務の返済に息詰まっている場合は「個人再生」や「任意整理」の方法で債務整理を行うことも検討できます。
・個人再生は裁判所を介する債務整理の手続です。カーリースやローンの残債がない場合、清算価値に計上することで手元に残せます。(車の価値によっては返済額が大きくなるため注意)
・任意整理の場合、カーリース契約やローンの残債がある債権者以外と交渉すれば、車両を手元に残せます。 詳しくはコチラ(よくある質問NO5)
ただし、個人再生も任意整理も分割ながら返済を続けていく必要があります。すでに返済が難しいご状況の場合は選択できない可能性もあるため、まずは早期に弁護士と方針を決めることが望ましいでしょう。
まとめ
本記事では法人破産・自己破産時におけるカーリース契約について詳しく解説しました。カーリース契約中の車両については法人破産・個人の自己破産のいずれにおいても車両の返却が必要となるため注意が必要です。
法人破産を進める場合、カーリース以外のリース契約にも注意しながら手続を進める必要があります。まずはお気軽に当事務所へお尋ねください。
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- 「自己破産するとカーリース契約はどうなる?会社・個人別に解説」
- 仕事をできますか
- 代表者だけ破産したいのですができますか
- 代表者の破産
- 会社の財産を使ってもよいですか(使ってしまったのですが大丈夫ですか)
- 債権者から追われませんか
- 債権者集会の内容はどのようなものですか
- 危機的状況にある会社の放置
- 取引先は破産後どうなる?
- 子供が事業を継げますか
- 家を守れますか
- 家族の財産はどうなりますか
- 年金をもらえますか
- 店舗や倉庫はどうなりますか
- 従業員がいるのですがどうすればよいですか
- 法人代表者の死亡
- 生活保護を受けることはできますか
- 破産すると第三者にわかりますか
- 破産によって会社の特許権や著作権はどうなる?
- 破産後会社役員になりますか
- 管財人から追求はどのようなものですか