リスケジュールのメリット・デメリットとは? 融資した銀行との交渉方法も解説
リスケ(リスケジュール)とは、金融機関の融資について返済の猶予や条件の変更を求めることです。会社の経営、業績が悪化し資金繰りが困難になった時に、会社再建まで返済を猶予してもらうために銀行と交渉します。リスケにはメリットもありますがデメリットもあるため、弁護士などの専門家に相談し慎重に検討すべきです。
Contents
銀行融資のリスケジュール(リスケ)のメリットと弁護士が同席すべき理由を解説
リスケジュールとは、銀行融資の返済条件を変更することです。支払い期限を延長したり、毎月の支払額を減額、利息や損害金をカットするなどが主な内容になります。
リスケジュールをすることで借入金の返済計画に余裕ができ、その間に会社を建て直せます。
よってリスケジュールは、会社再生を目指す方が「新規融資獲得」の次に目指すべきステップだといえます。
今回は、リスケジュールのメリット・デメリットや、銀行との交渉に弁護士が同席した方がよい理由などについてお伝えします。
リスケジュールとは
リスケジュール(reschedule)とは、銀行融資の返済条件を変更することです。
略して「リスケ」と呼ぶ場合もあります。
リスケジュールというと、ビジネス用語のイメージが強い方だと「日程調整」のような意味だと思いがちですが、銀行融資におけるリスケジュールとは、銀行融資の返済条件の変更を指します。
具体的な内容をあげると、
- ・支払期限の延長
- ・毎月の支払額の減額
などがあります。
銀行融資のリスケを検討すべきケースとは?
会社の業績が悪化し、会社の資金繰りが困難になる要因の一つに、銀行などの金融機関への返済の負担が重いことが挙げられます。
融資を受けている会社が銀行にお金が返せなくなった場合は、不良債権となるため、銀行としては法的な回収手段を講じざるを得ませんが、そうなると、会社が倒産しますし、焦げ付いて回収が困難になることも珍しくありません。
銀行としてもこうした事態は極力避けたいと考えているわけですから、融資を受けている会社からリスケの申し出があった場合は、交渉に応じてくれる銀行が多いと考えられます。
リスケによって、借入金の返済を一定期間猶予してもらっている間に、経営の立て直しを図り、持ち直したら、返済を開始する。このような形なら、銀行としても損にはなりません。
そのためには、しっかりとした資金繰り表、事業計画書、経営改善計画書や担保、保証人に関する資料を用意して、銀行に納得してもらうことが大切です。
銀行融資のリスケに対応してもらいやすくなった理由とは?
リスケジュールは、平成21年に施行された中小企業金融円滑化法により、以前よりも対応してもらいやすくなりました。
中小企業金融円滑化法は平成25年3月末で期限を迎えましたが、金融庁は「引き続き円滑な資金供給や貸付条件の変更などに努めるべき」だと金融機関に呼びかけています。
現行の金融検査マニュアルや監督指針には、中小企業金融円滑化法の趣旨が承継されているため、これらのマニュアルに沿った経営改善計画を提出すれば、金融機関もリスケに対応してくれるようになっています。
(金融庁:中小企業等に対する金融円滑化対策について)
また、中小企業庁が運営している新型コロナ特例リスケジュール支援というものもあります。
従来の再生計画支援は、事業改善の見通しがなければ支援が不可能でした。
しかし、このコロナ特例リスケ支援は、コロナの影響で業況が悪化した事業者の当面の資金繰りを確保できます。
弁護士など専門家が伴走して、コロナが収束した後の再生まで、資金繰りのお手伝いをいたします。
銀行融資のリスケのメリット
銀行融資のリスケには様々なメリットがあります。一般的には融資を受けている債務者側にしかメリットがないように見えるかもしれませんが、銀行側にもメリットがあります。
債務者側と銀行側それぞれのメリットを確認しましょう。
債務者から見たリスケジュールのメリット
リスケジュールのメリットを簡単にまとめると、以下の3つとなります。
- ・返済期間が延びるため、資金繰りが楽になる
- ・リスケジュール中は銀行が法的な回収処理を行わないため、倒産しない
- ・借り換えと異なり余計な費用が掛からない
リスケジュールで特に多いのが、6ヶ月から1年間の間、利息返済のみにする(基本的に元本返済なし)というケースです。
利息分は継続的に返済していく必要がありますが、元本返済の期限が延びれば、一時的に経常利益率が改善します。
また、リスケをしている間は銀行は法的処置をとりません。強行な回収を行わないため、取り急ぎではありますが、倒産を回避できます。
債務が大きい企業が、キャッシュフローが安定しないまま再建するのはとても難しいです。しかし、リスケジュールをすれば、時間的な猶予が確保できます。
さらに借り換えを検討する場合は借入の全額返済や新規借り入れのための手数料がかかりますが、リスケだけであれば、余計な費用が掛かりません。
銀行から見たリスケジュールのメリット
リスケジュールは、申し込む企業側だけでなく、お金を貸している銀行側にとってもメリットがあります。
多くの経営者が「銀行から借りたお金は、何が何でも絶対に期日までに返済しなくてはならない。」と考えています。
しかし、返済に必死になるあまりに会社が倒産してしまうと、銀行は配当以外のお金を回収できません。
銀行としては、貸したお金を回収できない事態は避けたいと考えています。
リスケジュールをすることで倒産を回避できるのであれば、銀行はある程度柔軟に相談に応じてくれるでしょう。
銀行融資のリスケのデメリット
銀行融資のリスケには様々なデメリットがあります。融資を受けている債務者側と銀行側の双方にデメリットがあるので確認しましょう。
債務者から見たリスケジュールのデメリット
リスケジュールのデメリットを簡単にまとめると、以下の3つとなります。
- ・猶予期間は最長で1年から3年程度。
- ・リスケ中は新規融資を受けられない。
- ・信用格付けが下がる。
銀行融資のリスケによって返済が猶予される期間は、最長でも1~3年です。半年しかないことも珍しくありません。
その間に、経営不振の原因となっているキャッシュフローのマイナスをプラスに転換しなければなりません。
役員報酬のカット、リストラの断行、売り上げの劇的な回復等、様々な施策を講じる必要がありますが、これらの事項を1~3年という短い期間で実行しなければなりません。
返済が猶予される期間内に実現できなかった場合、リスケの延長や更新は難しいのが一般的です。
最低でも経営改善計画の8割は達成していないと、リスケの延長や更新は認められません。
経営改善計画が実現できなかった場合は、銀行の態度も硬化し、法的処置や債権をサービサー(債権回収会社)に売却する等の強行な債権回収手段を講じるようになります。
この場合、会社側は倒産の危機に追いやられてしまいます。
また、リスケ中は新規融資を受けられないのが一般的です。
そのため、リスケ中は手持ちの資金だけで凌ぐか、他の資金調達手段を講じる必要があります。
信用保証協会の保証付き融資の場合は、他の金融機関から新たに融資を受けることも難しいため注意しましょう。
さらに、リスケを行った場合は、信用格付け(債務者区分)が下がり、新規の融資を受けにくくなることもあります。
特にリスケを行っても経営状況が改善されていないと銀行が判断すると、再び経営難に陥ることを懸念して新規の融資を控えることもあります。
一方、リスケ中に経営改善計画に則った改善を実現できていれば、信用格付けが正常になり、新規の融資を受けられるようになります。
銀行から見たリスケジュールのデメリット
融資先の会社がリスケを申し出てきた場合、銀行は倒産のリスクがあるものとして警戒しなければなりません。
リスケに際しては、会社側から経営改善計画を出すのが一般的ですが、その内容が実現可能なものなのか、見極めることが大切です。見通しが甘い場合は、結局、リスケしても業績が改善せず、融資した資金の回収ができなくなってしまいます。
こうした理由により、銀行側は経営改善計画を厳しく審査するので、会社側としては銀行を納得させるために最善を尽くさなければなりません。
リスケの交渉の場に弁護士に同席してもらうのも有効な手段の一つです。
リスケジュールの種類
リスケジュールの内容として、
- 1. 返済期日を延長する
- 2. 月額の返済額を減らす
という2つの種類があるとご説明しました。
①の種類を暫定型リスケジュール、②を恒久型リスケジュールといいます。
一般的に多いのが、①の暫定型リスケジュールです。よって、この記事では、暫定型リスケジュールに関して掘り下げて説明します。
暫定型リスケジュールの期間
暫定型リスケジュールで、延長される返済期日は6ヶ月~3年が多いとされます。この期間の状況を確認して、追加で期日の更新を何度か行うパターンもあります。
暫定型リスケジュールは、公平になるよう融資を受けているすべての金融機関との間で行います。
また、リスケジュールをしている間は、新規融資を受けることができません。
これは、言い換えると「どの銀行からも融資をしてもらえなくなった」タイミングこそ、リスケジュールをするべきタイミングであるとも言えます。
この記事の最初に「リスケジュールとは、会社再生を目指す方が『新規融資獲得』の次に目指すべきステップ」だと説明したのは、こういう理由があるからです。
暫定型リスケジュールの手続きの流れ
暫定型リスケジュールの手続きには、以下の5つのステップがあります。
- 1. リスケジュールを申し入れる
- 2. 金融機関説明会(バンクミーティングを行う)
- 3. 各金融機関に説明を行う
- 4. 資料を提出する
- 5. 定期的に金融機関に予実状況を報告する
まず、①金融機関への申し入れを行います。融資取引のあるすべての金融機関と連絡を取らなくてはなりませんが、多くの金融機関がメインバンクの動向に合わせて動きます。
申し入れを行う場合は、最初にメインバンクに連絡するとよいでしょう。
融資を受けている銀行がいくつかある場合は、②金融機関説明会(バンクミーティング)を行います。金融機関の方から開催を求められる場合もあります。
金融機関は、他行との公平性を重要視します。複数の金融機関を同時に集めて同じ情報を説明すると、真摯な態度を示すことにもつながります。
③金融機関への説明では、「いつまでに・どれくらいの返済なら可能であるか」を伝えるのが重要です。
今後の見通しについて、その段階でわかることは全部伝えるようにしましょう。
ただし、見通しは見通しであるとして、今後変更される可能性があるとアピールする必要があります。見通し通りに物事が運ばなかった場合、トラブルになる可能性があります。
金融機関をより納得させるためには、④資料を提出するのがとても重要です。
現在困窮の原因は何なのか、今後売上をどうやって上げるのか、リストラを含め経費をどうやって抑えるのか、その結果どのタイミングで経常黒字化して、その暁にはキャッシュフローの何割を弁済に充当するのかという改善計画書を具体的な数値で示すようにします。
例えば、以下のような資料を提出するとよいです。
- ・財務デューデリジェンス調査報告書。
- ・今後1年間の月別資金繰り表:返済期日を変更しないままだと近いうちにショートするが、期日を延長すれば返済可能だというのを示します。
- ・損益計画書:細部までは作成せず、おおまかな見通しだけでもあると、金融機関を説得しやすくなります。
- ・経営改善のために、過去行ってきたこと、現在行っていること、これから行おうとしていることなどを具体的に示す資料。
- ・予定貸借対照表。
- ・具体的改善計画書。
暫定リスケジュールが成立したあとでも、金融機関とは⑤改善計画の予実表を提出しておおむね6ヶ月毎に定期報告することが必要です。
6ヶ月に一回はバンクミーティングを実施して、月別の資金繰り表や残高試算表を提出します。ミーティングを実施するのが難しい場合は、個別に訪問するのが理想です。
リスケジュール交渉が難しい時は具体的改善計画を提示して弁護士に同席してもらう
リスケジュールの交渉は、具体的改善計画を提示して弁護士が同席し会計の観点法的な観点双方から説明する方が了解が得られやすくなります。
もちろん経営者が、ご自身の力で銀行と交渉することも可能です。しかし、きちんと作成した資料を提出しても、金融機関がリスケジュールに応じてくれないケースもあります。
弁護士が同席することで、会計上 法律上適格な説明が可能となりますし、金融機関としては第三者目線の客観的な情報を得られます。
弁護士が関わると、交渉をする側と受け入れる側の両方にメリットがあるのです。
初めて金融機関にリスケジュールを申し出るときや、バンクミーティングなどは経営者が同席するのが望ましいですが、それ以外の交渉はすべて弁護士に任せられます。
大変な交渉を弁護士に任せておくことで、経営者は、
- ・精神的な余裕を持てる
- ・本業に専念して経営を立て直せる
のです。
リスケジュールを申し出るときは、銀行交渉の経験が豊富な弁護士を代理人とすると、より円滑に手続きが進みます。
弊事務所には、会社再生の経験豊富な弁護士が在籍しております。リスケジュールに関するご相談も受け付けております。
お金の返済というのは、精神的にとても大変なものです。一人で悩み続けると、どんどん悪い方向へと思考が進んでしまい、本来できるはずだった対処が間に合わなくなるかもしれません。
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