コロナ禍の業績悪化で経営管理ビザの更新ができない?外国人経営者が知っておきたいポイント
コロナ禍による業績悪化の増加
現在、長引くコロナ禍の影響を受けて、多くの事業所が業績悪化の傾向にあります。事業継続が苦しくなったことが減員で、各種補助金などの申請をしている企業も増えてきました。
日本で事業を行っている事業主様のなかには、外国籍の方も数多くいらっしゃいます。そういった方は、「経営管理」の在留資格を取得して、日本国内で企業を経営する許可を得ておられます。
しかし、自身が経営する事業所の業績が悪化すれば、経営管理ビザの更新自体ができなくなり、日本で在留し続けることが難しくなります。
この記事では、日本で企業経営をされている外国人経営者の方向けに、コロナ禍における経営管理ビザの更新についてお伝えします。
実際に弊所にご相談いただいた事例
弊所では、事業再生に関するご相談を様々な企業様よりいただいており、それぞれのケースに応じて適切なアドバイスをして参りました。
2022年には、外国人経営者の方から事業再生に関するご相談をいただいております。
事例の概要
本件の依頼者であるウワブさんは、2019年にネパールから来日し、日本車の部品輸出のビジネスをするために経営管理の在留資格を取得しました。
その後、日本で株式会社ウワブを設立し、代表取締役(社長)として自ら貿易業を経営していました。
当初、ビジネスはとても順調でした。というのも、ネパールでは日本車の価値が非常に高いからです。ウワブさんが、親戚が経営するネパールの自動車販売業者とタッグを組んだこともあって、会社は年商3億まで成長しました。
しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、船輸送のコンテナに空きがなくなってしまい、さらに運賃も3~4倍にまで高騰しました。そのため、会社の収支が一気に悪化したのです。
ですが、銀行から融資を受けている以上、赤字決算は出すことができません。ウワブさんは商品勘定を調整し、粉飾決算により黒字の体裁を取った決算書を作成しました。
現状に危機感を覚えられたウワブさんは、弊所に事業再生のご相談に来られたのです。
解決に向けた流れ
弊所の弁護士が、真正な決算書であるとして検討を行いました。その結果、輸出入に頼らない収支を検討すれば、営業黒字を確保することができそうでした。
ウワブさんの会社については、事業再生を活用することで事業を継続できましたが、実はこの事例には、いくつかの入管法に関連した問題が発生するリスクがありました。
「経営管理」という在留資格で日本に在留する外国人の多くは、母国に商品を輸出入する事業を行っています。
もし母国で親族が輸入・販売を行えば、単純計算して2倍の経済的利益があるビジネスです。
しかし、コロナ禍においては、このビジネスモデルが大きな打撃を受けました。
そもそも輸出入をすることが大前提のビジネスですので、商品のやり取りができなければ売上が立たないのです。
商品のやり取りができない間、固定経費分だけ収支は悪化してしまいます。
そのため、融資を受けている銀行に収支状況の悪化を気づかれないように、黒字決算にしようと粉飾決算を行う会社が増えてしまうのです。
それでも国内事業を行って営業黒字を確保すれば事業を継続できるのでは?と思われるかもしれませんが、ここに大きな罠があります。
事業再生計画を作成して銀行と交渉するにしても、交渉の過程で真正な決算書を提出しなければなりません。やむを得ず粉飾なしの決算書を作成すれば、債務超過が露呈してしまうのです。
事業再生する会社が債務超過であることは、あまり珍しくはありません。
しかし、問題は経営者が「経営管理」の在留資格で日本に留まる外国人であることなのです。
「経営管理」の在留資格の更新許可申請をするには、経営している事業が継続して安定しているかどうかが判断材料となります。
真正な決算書において、2期債務超過が継続する場合には、原則として事業の継続性安定性要件を欠くと判断されるでしょう。
そうなると、もし事業再生に成功しても、経営者の在留資格更新が不許可になってしまい、日本に在留できなくなる可能性があります。結果、事業継続が困難になってしまうのです。
経営管理の在留資格で日本に在留している経営者様は、ご自身の在留資格に関連する対応を踏まえながら、事業再生を行わなくてはならないのです。
外国人が経営する会社の事業再生・倒産は入管法の理解が必須
このような事態にならないためにも、「経営管理」ビザで日本に在留する経営者様は、
・企業法務分野について相談できる専門分野を確保する
・在留資格の取り扱いに関する知識がある専門家を確保する
といった対策をしておくことが重要です。
外国人が経営している企業の事業再生や倒産の問題を解決するには、単純に倒産法制を理解しているだけでは不十分です。
外国人経営者の在留資格を含めた問題を解決するためには、入管法への十分な理解と知識がなくてはなりません。
入管法に精通した弁護士であれば、このように多角的な視点から課題を見据えて事業再生の方針を立てることができます。
しかし、事業再生、倒産、入管法の全てに精通する弁護士は多く無いのが現実です。
というのも、日本において、法律事務所は特定の分野を専門としているところがほとんどだからです。
一見何の関係も無いように見える倒産法と入管法を掛け合わせて課題解決できる法律事務所はほぼ無いといっても過言ではありません。
弊所では、複数の弁護士が専門部に所属し、国際部、倒産部、家事部など横断的に問題解決にあたります。
外国人経営者の経営課題については、個々の問題に対応するだけでは根本的な解決にはなりません。
常に経営者自身や従業員の在留に関して、入管法の課題解決を併せて考えなければならないのです。
どうぞ、一度ご相談ください。